高根沢の道の駅のホールで、設置されているピアノを弾く中年の女性がいた。リストのラ・カンパネーラである。その演奏の見事さに驚かされた。地方はむかしと違って、市街化が進んでいるとはいえ、このあたりは農村地帯である。 あまりの見事さに、盛大な拍手を贈ったところ、私たちのところに御礼に来て、身の上話しをしてくれた。63歳の女性で、ピアノを習い始めたのが、2年前。父親を送り、老いた母親(85歳)が老人ホームに入り、こどもたちも片付いて、手も掛からなくなったので、さてこれからどう生きて行こうかと考えた末、長年の夢であったピアノを習うことにした。ところが、楽譜が読めない。それでもピアノを習いたいという気持ちを抑えきれず、近くの先生の門を叩いて感銘したリストのラ・カンパネーラが弾けるようになりたいと訴えたところ、彼女の真剣な気持に動かされて入門が許された。ところが、バイエルなどの初級からでは自分の歳から考えて間に合わないから、是非、リストのラ・カンパネーラをと切望した。先生も驚いたことだろう。しかし、「それならば曲の最後から教えていく。そうすると、もっと弾きたいという気持をもつからだ」といって教え始め、2年間でこの曲が弾けるようになったという。 昔から「五十の手習い」というが、77歳となった今、無気力ではいけないと気づかされた。 また、是非、聴きに行きたいものである。
クチコミタグ